黄柳野高等学校設立趣意書

日本の教育の危機が叫ばれて久しくなります。その危機は克服されるどころかますます深刻の度を深めています。
 私たちは、人間の全面発達をすすめるために、子ども達の持っている多様な可能性・能力をひきだし、心の自由と自立・連帯を育て、情操・自己表現を重視した教育を実現するための学校を、多くの皆さんとの協同の力で創ることを決意しました。

 今の学校は、高学歴社会の要求に応じた「効率の良い」教育をすすめるために偏差値教育・切り捨て教育をすすめる場になってしまっています。子どもの可能性・能力を引き出し、豊かに成長させる場でなくてはならないのにもかかわらず「教育」という名で管理し可能性を「切り捨て」、学校や教師の権限で若い芽をつみとってしまう場となっていく傾向は強くなってきています。

 家庭の教育力も極端に低下してきているといわれています。核家族化、親の長時間勤務、少子化、子どもの塾通いなどが原因で親子の絆が弱くなってきています。夫婦のあり方の変化の中で子どもが犠牲になっている家庭も増えてきています。社会の中で子どもが犠牲になっている家庭も増えてきています。社会の急激な変化のなかで、親子の意識のズレが広がり「子どもがみえない」とよくいわれます。親の子どもを見る視点が、社会や学校の影響で、教科の成績で能力を評価する傾向が強くなってきています。親自身が子どもの持つ潜在的な多様な可能性・能力を見いだしえずに、点数だけで評価するようになれば、子どもの成長を助けることはできません。現代の親は「子育てが大変下手になってきた」といわれるのも、子どもを見る視点と深く関係があると思います。

 しなやかな体とみずみずしい感性、想像と創造の力、自己を表現する能力、これらは本来若者にある素晴らしい能力です。この学校では、人間の全面発達をすすめるために、学習・自己表現・芸術・労働と体験等を重視し、身体の発達にも力をいれていきます。

 全寮制をとり、どの子も月曜日から金曜日までは寮で生活します。友人や教師たちとの共同生活を通して、人と人との関わりを学びます。親子の関係を客観的に見つめる期間にもなるでしょう。土・日曜日は家庭に帰って、親子の絆を確かなものにするようにします。家族・学校・地域の連携を密にし、協力して子育てをおこないます。

 こうした教育をする学校のなかで、子どもたちは、教師・大人に出会い、友と交わり、自然と出会い、創造し、自己を問い、視野を広げ、真の学問を身につけ、自立していきます。

 新しい学校の建設の地を、私たちは奥三河・鳳来町に求め、地元の方々は暖かく迎えて下さっています。豊かな自然が残り、人々の歴史と生活がつくりあげてきた民族文化の宝庫とも言われています。霊峰鳳来寺山を中心にした山々に抱かれた人情味豊かなたいへん閑静な土地です。利益優先の社会では、この地から便利な都市部へ人々が移動し、過疎化が進んでいます。しかし、人々がお互いに助けあって人間教育を実施するには、最適な地であると考えます。

 この学校は、「すべての子どもたちが主人公になる学校」をつくりたいと願う多くの人々が、わずかばかりの資金を持ち寄り、豊かな教育を願う方々の善意に支えられて設置される学校です。ですから、学校づくりの段階から大勢の人たちが参加し、運営にも多くの方々の声が反映されるシステムです。真の共立の開かれた学校です。

子どもの自立を願う、心ある多くの方々の御賛同と御支援を心からお願いいたします。